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チョコレートのやさしいテンパリング法

2023/3/13更新

チョコレートを美味しく見た目よく仕上げるためには、テンパリングという技術が不可欠になります。

テンパリングとは

「テンパリング」とは、Tempering=焼き直し、という語源から分かるとおり、再度温度調節をすることを言います。

チョコレートの場合のテンパリングとは、溶かすために上げた温度を一旦下げ、再度加熱して適温で安定させる作業を言います。
このテンパリングを行うことで、ココアバターの結晶を安定化させ、なめらかで艶のある口溶けの良いチョコレートを作ることができるのです。

チョコレートのテンパリング方法

  1.  45~50℃の湯煎でチョコレートを溶かします。
  2.  チョコレートが25~27℃になるまで、ゆっくり混ぜながら冷やします。
  3.  31~32℃まで再び温めます。
  4.  型に流し込んだり、コーティングしたりします。
  5.  最後に冷蔵庫などで冷やして固めます。

チョコレートのテンパリング温度曲線は、約43℃(完全に溶けた状態)から始まります。冷ましながら温度が30℃以下に下がってくると、とろみがつき始めます
その後、再加熱を行なって32~33℃くらいまで温度が上がってくると、テンパリング効果によって安定した結晶化が起こるのです。

ココアバターの脂肪分がどのように結晶化するのか知りましょう。

ココアバターの脂肪分の結晶化には6つの段階があります。
溶かすために上げた温度が下がってくるととろみが付き始めますが、その後どの温度帯で結晶化させるかによって出来上がりのチョコレートには以下のような特徴が生じるようになります。

滑らかなチョコレートを作るためのテンパリング作業とは、第5段階(Ⅴ型結晶)に仕上げることを指します。

  • 第1段階(Ⅰ型結晶) 17℃ チョコレートは柔らかくてもろく、溶けやすい。
  • 第2段階(Ⅱ型結晶) 23℃ チョコレートは柔らかくてもろく、溶けやすい。
  • 第3段階(Ⅲ型結晶) 25℃ チョコレートは固まっているがパリっと割れず、溶けやすい。
  • 第4段階(Ⅳ型結晶) 28℃ チョコレートは硬くてパリっと割れるが、溶けやすい。
  • 第5段階(Ⅴ型結晶) 33℃ チョコレートは光沢があって硬く、パリっと割れる。体温で溶ける。
  • 第6段階(Ⅵ型結晶) 36℃ チョコレートは非常に硬い。固まるのに時間がかかる。
  • ※25℃までは80%が結晶状態を維持しているが、それを超えると一気に融解し33℃で全てが液状化する

参考例:パティシエのテンパリング方法 パティシエ ライフハック【隙間時間でチョコレートのテンパリング】

テンパリングの理論

  1. まずドロドロに融けたチョコレートをIV型の融点(約27℃)以下の25~26℃まで温度を下げ、IV型を結晶化させる。
  2. 次に、再び温度をIV型の融点以上かつV型の融点(約33℃)以下の30℃程度(29~31℃)まで上げ、IV型を融解させる。そして、V型の結晶化「種結晶」を促す。
  3. 最後に20℃程度に下げてそのまま1 時間以上放置して種結晶をもとに種の付近の液体を結晶化させる。種がV型なので、できる結晶はすべてV型となる。1時間程度ではまだ全てのチョコレートがV型に結晶化しているわけではなく、倉庫などにて一定温度(15℃~20℃)で2~3週間程度保管することにより、V型に結晶化した部分を基に全体をV型に結晶化させることができる。これが店先で売られているチョコレートがおいしい秘密である。

種投入によるV型結晶化の促進

テンパリングは融液ココアバター中にV型結晶核を生成させる方法であるが、外部からV型結晶を投入することで、テンパリングと同様の結果を得ることも可能である。
この方法は、チョコレート職人が経験的に行っているもので、融解する前の固形チョコレートの一部を削って粉状にし、それ以外のチョコレートを融かして30℃に調温する。
そして最初に作製したチョコレート粉末を添加する方法である。融かす前の固形チョコレート中のココアバターはV型として固化しているので、それを粉末化したものはV型結晶核となり得るのである。

混ぜることでV型結晶化を促進できる

V型結晶を作るには、温度に加え「シアストレス=攪拌」が重要です。シアストレスとは、一般には断層面など面と面がすべる時に生じる「ずり応力」のことですが、ここでは撹拌する、混ぜ方のことを言います。驚くことに、混ぜる力の強さや回転数によっては、温度変化が無くてもV型結晶ができることが分かり、温度変化と併用すれば、これまで数時間かけて結晶化していたものを数十分にまで短縮することが可能になるということです。

チョコレートの成分と特徴

チョコレートはカカオ豆の成分(カカオマス、カカオバター(他にカカオニブ、カカオパウダーなど))に砂糖や粉乳などを加えて作られます。
カカオマスにはチョコレートらしい香り・苦味がありますが、カカオバターは無味無臭です。
ですが、後述のとおり、チョコレートの状態の善し悪しを決定づけるのはカカオバターの存在です。

【メモ】カカオとココアは製造方法によって呼び名が変えられているそうで、カカオは低温ロースト、ココアは高温ローストしたものだそうですよ。

ここではカカオバター=ココアバターと読み取って下さい

カカオバターはとてもおもしろい油脂で、正しくテンパリングを行って冷やし固めると融点(とける温度)が約33℃の結晶になります。

ここではカカオバター=ココアバターと読み取って下さい

コーティングに適したチョコレート作り

テンパリング不要の製菓用チョコレートというのものが販売されていて、コーティングチョコレートパータグラッセ【仏:pâta à glacer】という名で呼ばれています。
これらと通常のチョコレートの違いを調査したところ、おおまかに言えば、油分の配分量が多めになっています。

通常のチョコレートを購入したものの「コーティングし難い」と感じたら、テンパリング作業の初段階「1. 45~50℃でチョコレートを溶かす」でチョコレートをダマなく溶かしたところでサラダオイルなどをチョコレート量の10~20%ほど混ぜ込んで下さい。
かなり滑らかな液状に仕上げることができますよ。

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